なにか一つ達成した時に、自分が本当は何を求めていたのかわかる

目標を立ててそれに向かって努力することは、誰もが経験したことがあるだろう。あなたも、今まさにその途上にいるのかもしれない。僕も高校生ぐらいから中長期的な目標を決めては、取り組んできた。うまく行ったこともあるし、期待通りの結果が出なかったこともある。目標の内容はかなりバラエティがあるが、この度一貫した軸らしきものに思い至ったので、ここに記そうと思う。

理系の高校生だった僕は「いつかビッグになる」という謎の展望を抱いていた。しかし現実は、部活にものめり込まず、勉強をそつなくこなし、のらりくらりと過ごしていた。

ほのぼのした日々の中、兄が医学部に入るというショッキング?なイベントが発生。医者というのは遠い世界の仕事だと考えていた自分にとっては、身近な家族がその道に進んだのは大きな衝撃だった。

当時の医者に対するイメージは、「命を救う尊い仕事、激務、高給→かっこいい!」というものであった。しかもミュージシャンのような、どうやってなればいいかよくわからない職種と違って、医師になるには医学部に入ればよいだけらしい。

医学部に合格すれば、必ず医者になれる。それに気づいたら急にやる気が出て、受験勉強にのめり込んだ。中高とそれまであまり本気になれるものがなかった。受験を通して明確な目標を立てて、そこへ日々向かっている手応えは新鮮だった。努力+運に恵まれ、運良く医学生になることができた。

熱い思いを持って医学部に入ったが、入学すると見事にやる気が無くなった。これは自分自身で死ぬほど驚いた。そこで気づいたのだ。大学受験へのモチベーションは「大学合格」であり、医師として大成することではなかったのだ。それで途方に暮れてしまった。

医学生時代。僕は英語が好きで、やる気がないながらも、英語で医学の勉強をしていた。アメリカでの臨床を行うのは、難易度やドヤ要素を考えると、自分の次なる目標としてふさわしいと思った。それでも学生中には受験準備が終わらず、初期研修中も続けた。結構ハード病院であったが、早起きするなどしてコツコツ勉強を続けた。

医師3年目は、国内の米軍病院に就職。その1年で集中して努力を重ねた結果、アメリカ医師免許を取得することが出来た。その時は心から嬉しかった。

取り組んでいたのは、中断していた時期をいれて5年程であった。米国の大学病院への留学も行った。3週間という短期ではあったし、実際に働いていたわけではないが、臨床研修に近い体験ができた。そこで自分の能力がある程度通用する手応えも得たし、米国人医師からの推薦状も書いてもらえた。これで準備万端。本気で就職活動を始める予定となった。

医師4年目。古巣の職場に戻ってきた後、なぜかアメリカへの就職活動へのモチベーションが上がらない。そこで判明したのだが、どうも自分は免許取得と短期研修で満足しているのだ。プツンと糸が切れてしまっていた。

アメリカへの臨床留学へのモチベーションがなくなったあと、職場の仕事に全力投球した。自分の所属部署や仲間の為に、思いつく限りのことをやってみた。

ある程度手応えを感じ始めた頃、臨床医を中断し、企業に転職した。

* * *

「結局何がしたいの?」

10代後半から20台と、目標を立てては満足しては、再び別の目標を立てた。あまり一貫性のない人生のように思う。

一つ言えることとしては、その時所属していたグループで、自分が頑張る姿を見せたり、直接働きかけることで、ポジティブな影響を与えたかった。それは確かだ。

出身高校は一般受験をする人はほぼいなくて、学年でセンター試験を受けるのは数人だった。難関大学は、進学校に所属していないと入れないという通説がある。僕は、自分の意思さえあれば、その幻想を打ち壊すことができることを証明したかった。

米国留学の件は、実現すれば単純にかっこいいなと思っていた。初期研修先は結構ハードな職場であったが、そういった環境でもUSMLE取れるんだよ、ちゃんと結果は出せるんだよということを示したかった。そして「自分はアメリカでも通用する」という手応えが得たかった。

戻ってきた職場でも、変更不可能と思われるマターを動かすことで、皆が少しでも前向きに仕事に取り組む一助になることがゴールだった。

こういったスタンスは、どう思われるか。中途半端で結果にコミットしていない、という見方もあるかもしれない。自分でもそう感じて、不安になる。

それでも僕は、自分の挑戦や努力を通じて、周りに影響を与えたい。若くして世界で活躍するアスリートとか、企業の経営者とか、そういった人の姿が思い浮かべてみる。彼らは自分たちの挑戦、戦う姿を見せることで、日本中に勇気を与えている。医者でもそういった人はたくさんいるけど、僕はちょっと違うことやってみたかった。

自分の目標は、そういったところにあるのだと思う。