30歳になる前に「メモの魔力」を読んで自己分析した内科医の顛末

「自分とはなにか。何を目指しているのか?何がしたいのか?」

そういった自分の軸がしっかり定まっている人であれば、人生の意思決定において自分の軸に沿って判断するだけで良いので、迷う必要はない。逆に、自分は何を目指しているのか?そこが曖昧であれば、漠然とした違和感や不安は常につきまとって拭い去ることはできない。

30歳を迎える前の自分の話である。そんな日々、話題の一冊をKindleで読んだ。

メモの魔力

Mr.長澤まさみ、前田裕二さんの作品である。

前半は日常レベルで、メモを取る目的と方法が書いてある。簡単に説明すると、「ファクトをメモる→メモ内容を抽象化する→具体的なTodoや目標にする」という3つのプロセスを勧めている。ファクトをメモるだけでは意味はなく、普遍的な知見に昇華させるための抽象化や、ToDoにして実際のActionにつなげることの重要性を繰り返し説いている。このような習慣を通して、日々の出来事をメモし何でも自分の血肉に変えようというメッセージだ。これはこれで興味深い内容で、自分も早速モレスキンの高いノートブックを購入し、日々メモをとるようにしている。

今回の主題は後半の「自分の人生の軸を考えるためのメモ」である。前田氏が用意した100の問い(小学生の自分が大事にしていたことは?高校生の時の理想の職業は?など)に答え続けることで、自分の中で軸となる価値観や人生の目的を見つけだそう、という試みだ。人生の段階毎に、繰り返し同じ設問が続くのが特徴だ。最低100、余裕があれば1000個の問いに答えることを本では推奨しているが、自分は60個ぐらいまで答えてみてだいたい同じ結論に至るようになったので、そこで終了した。

その時にたどり着いた結論は以下の記事に詳しく書いてある。

なにか一つ達成した時に、自分が本当は何を求めていたのかわかる - 内科医をやめて製薬企業へ就職した男のブログ

簡単にまとめると「自分には昔から明確なやりたいことは存在しないが、何かに挑戦し活躍して、自分の周りにポジティブな影響を与えたい」、ということだった。それに付随して「医師という職業に(そこまで)こだわりがない」ということも改めて判明した。この内容は、普段自分自身でもぼんやりと認識していることであったが、体系的な自己分析により人生のフェーズ(小学生、中学生、高校生、大学生、初期研修医)毎に洗い出してみても、一貫して同じようなことを考えているのを自分で認識できたことは発見であった。

さて、自分が大事にしていうる価値観を認識したら、今度はそれを自分の行動やキャリアに反映する必要がある。自分の今の生活は、自分の軸に沿った状態なのか?そこを真摯に検討する必要がある。ここが一番悩ましいポイントである。

当時、臨床医として働いていた僕が得た結論としては

「概ね整合性は取れているが、程度の甚だしさやスケール、迫力が足りない」ということだった。自分が頑張ることで周りを良くするという意味ではそれっぽい仕事が出来ているのだが、そのスケールや対象が限定的なのだ。例えばサッカー選手とかホリエモンのように、日本全体に対して影響を与えられていない、というのがどうしても気になった。もちろんそういった大きなスケールの活動ができる人は世界でもほんの一握りで、多くの人がone of themとして人生を終えることはよくわかっている。ただ、いつでも変更可能であるはずのキャリア(臨床医)が、自分が心の底から目指す目標につながっていない(可能性が高い)のに続けるのは、惰性であると感じた。仕事はいつでも変えられるのに、目標から遠のくキャリアパスを描いていいのか?しかも医師免許があれば、他分野に言って失敗しても、いつでも戻ってこれる。そう気づいていしまった僕に、言い訳の余地は無かった。

 

自分の現状についてモヤモヤと悩んでいるが、具体的にどうしたらいいかわからない。そんな人はまず第一歩として、自分の歴史や思いを洗い出す作業を行ってみたらどうだろうか。そんな人には、この本は一読の価値がある。

ちなみに、メモの魔力を読む前に、前田さんのファンになる必要がある。なぜなら彼をある程度信頼しないと、自己分析作業で挫折するからだ。IT企業の社長で長澤まさみの彼氏というだけで信頼できない人は、前著「人生の勝算」を一読することをおすすめする。

僕は、同年代でこんなにすごい人が居るのか、と衝撃を受け、自分も何かしなければ!と考えるキッカケとなった。