製薬企業とは、どういった人の集まりなのか

外資系製薬企業における日本支社の規模は、社員数にして大体2000-4000人ぐらいである。

製薬企業の人は「営業系」と「内勤系」に大きく二分され、各々に所属している人数も半々ぐらいである。これら2つは相当に距離のある職種であり、僕は基本的には内勤の人である。なので営業のリアルに関しては全然詳しくない。それでは見ていこう。

 

・営業系
製薬企業の職員のだいたい半分ぐらい(1000-2000人ぐらい)が「営業」に属している。医者にはおなじみ、俗に言うMR Medical Representatives である。彼らは各地に散らばる営業所に属しており、基本的には本社オフィスには出勤してこない。彼らの給料はかなり安い「基本給」と、売上とダイレクトに連携する「インセンティブ」により構成されている。自分が担当している地域において、自分の取り扱っている商品が使われれば使われるほど、自分の給料も上がる。

20代の若手から30台が大勢を占め、40歳ぐらいになると急に数が減ってくる。医者への露骨な接待が社会問題化してきたという背景もあり、全体の数は減少気味である。それでも30歳前後で年収1000万円を達成する人もいるので、それなりに存在感のあるキャリアの一つである。ちなみに医師からMRに行ったという人は、聞いたことないです。

 

・普通の新卒
本社オフィスには結構少ない。新卒だとしても大体が理系の最低は修士を終えている。待遇は一般的な若手サラリーマンよりやや高いぐらいで、そこまで大きな差はない印象である。新卒はサイエンスを取り扱う部署にはあまり居ない。そういった部署は基本的に元研究者などアカデミアからの中途、製薬企業からの転職、社内公募の人ばかりである(ゆえに、20代の人もあまり居ない)。

 

・元研究者
元研究者は、生物学、薬学部、化学系が多い。こういった人たちは基礎の理系知識が最低限あるので、製薬企業の中に入ってもすぐに話題にキャッチアップできる。MSLなど、メディカルアフェアーズの中で現場に出て実際に活動する人たちなどに就職する人が多い。アカデミア出身者はもともとの給料が安いことがあるので、転職の際の待遇交渉で苦戦することも多いと聞く。ただ、研究のトレンドを読みその波に乗れるかどうかも研究能力の一部ではあるので、自己責任と言えるのかもしれない。逆に製薬企業が力を入れている領域(感染症・悪性腫瘍・免疫など)の第一線にいた研究者には、結構良いオファーが出るとのことだ。

 

・元医療従事者(看護師、薬剤師など)
薬局薬剤師をやっていた人がやめて転職するというよりは、すぐに企業に就職している人もかなり多い印象。活躍次第だが、同年代の医者よりも高級が取れる人も居る。元検査技師、なんて人もいたりして、かなり多岐にわたる。それでも数はそんなに多くない印象だ。かなり上のポジションに居る人も居るので、そのまま病院や町の薬局で働くよりはよっぽど高待遇を望めるのではないだろうか。

 

・元医者(MD)
いちばん少ない。おそらくだが、全体の1%もいないのではないだろうか。開発や安全性、メディカルアフェアーズなどのサイエンスを取り扱う部署に多くて、逆にビジネスユニットや経営企画部みたいなところにはほぼいない。
これはある意味当然かも知れない。製薬企業が医師に求めているのは、臨床現場の感覚、医学的な経験知識、論文執筆や研究解析などのアカデミックな能力、であるので、これらが活かせる場所に配属されるのが普通である。

 

・まとめ
全体を通して感じていることだが、就職後のキャリアパスにおいて、就職前の資格とかこれまでのキャリアで何をしていたかというのは、絶対的な差を生んではいないと思う。最初の就職時の待遇には大きな差があれど(研究者vs医者などは特に)、その後のキャリアアップやサラリーアップに関しては、皆平等に機会が与えられている印象だ。

これは外資であることも影響しているかもしれない。絶対的なヒエラルキーが存在していた病院では、医師は常に守られていた。やる気があろうがなかろうが、年功序列による基本給とこれまた学年によって決まる時間外労働手当により、かなりの高給が約束されていた。命を預かるという責任、ミスの許されない環境であることは明白だ。それでも、それを理由に「守られていた」のも事実。

東大の理系学部卒の平均年収は、地方医学部の平均年収を大きく下回る。医師免許は、人生というゲームで最強のセイフティネットの一つであることに疑いの余地はない。

強固な安全基地を持っているからこそ、チャレンジを続けていきたい。