転職エージェントに聞く「なぜ臨床医が製薬企業から求められるのか?」

Linkedinに医師が登録した場合、メッセージが届く。

だいたいこんな感じである。
 
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長崎先生
 
はじめまして。私〇〇コンサルティングの鈴木と申します。これまで多くの医師の方へキャリアプランのご提案をさせていただいており、臨床医の方を製薬メーカーへ転職サポートさせて頂いております。
Linkedinを拝見させていただいたところ、現職でご活躍されており、企業への転職はお考えでは無いと思います。しかしながら、ご自身の市場価値や選択肢を知ることは、臨床医としてのキャリアパスを検討する上でも非常に有益だと考えられます。
お電話もしくはスカイプで、30分ほどお話お時間をいただけませんか。長崎先生のキャリア志向を伺うことで、理解を深めさせていただきます。私からは最近の転職案件のトレンドマーケット市況などをお伝えさせていただきます。
お忙しいところ恐縮ですが、ご検討のほどよろしくお願いします
鈴木
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英語でのメッセージもほとんど同じような内容である。このメッセージに返信すると、だいたい電話かスカイプを行うことになる。もちろん無料なので、あまり臆せず話を聞いていいと思う。英語での電話に自信がなければ、直接カフェで会うことも可能である。関東であれば、ある程度はこちらが場所を指定できた。
会話の内容はざっくりとしたお互いの自己紹介と、製薬業界に関する説明である。自分の場合は、4,5名の転職エージェントから話を聞いたが、何となく分かるようなわからないような感じであった。その中で、いくつか共通した点があったので以下に記す。
 

日本で製薬企業で働く医師(産業医ではない)は200-400名

製薬企業の医師は、一般的に臨床医よりもワークライフバランスが良いので、欧米では優秀な医学生が競争して就職するのが常らしい。米国では皮膚科や放射線科などが、同様の理由で人気である。日本では「医師は臨床か研究してこそナンボ、リーマンなんぞ格下」という考えが根強いので、医師が製薬企業への就職するのはかなりレアだ。
 

製薬企業は臨床医を常に探している(これはポジショントーク臨床経験がある程度あったほうが良い(最低5年)

医師の製薬企業への供給が少ないのは理解可能だが、企業側に医師を採用するメリットは有るのだろうか。それが結構あるらしい。製薬企業の中の人は元研究者だったりとアカデミックなバックグランドの人が多いのだが、メインの顧客である「医師」としての経験はない。なので、彼ら(医師)がどのようなノリで日々働いているのか、想像するしか無い。しかし医師であれば、そのような情報は日常そのものなので、とても詳しい。それは大きな強みだ。このような一般人では知り得ない「臨床現場のリアル」を語るには、ある程度現場にどっぷり使った経験が必要だ。それが、ある程度の臨床経験が必要、の理由である。
ちなみに、医学的な知識や論文などに関しては、実は製薬企業の人は死ぬほど詳しい。同じ疾患や領域でのみ知識面をアップデートしているので、専門医も逃げ出すレベルの知識をお持ちである。比較的若手の医師の転職では、知識面は負けていると思ったほうが良い。
他には、グローバル製薬企業の場合、重要ポジションの人はMDやPhDばかりなので、日本支部もそれに対応したいという思惑もあるとのことだ。
 

内資でも英語は必要(読み書きは当然)で、外資は英語必須(コミュニケーションも)

外資系製薬企業では、1-2段階ぐらい上の上司はネイティブ並の英語力をもつのが普通で、役員レベルだと外国人か、あるいは日本人だけど中身は外人、みたいな人ばかりになる。自分をアピールし評価されるには、英語でのパフォーマンスが良い前提となる。

臨床続けながら企業勤めすることも可能。週1外来と週4会社など

これは個人の希望や企業間で違うようだが、時々は病院に行って外来する人が多いとのこと。ただ週1外来であれば、なかなか専門的なことは出来ないだろうし、手術やICU管理なども無理そうである。そこは自分で落とし所を見つけるしか無い。
 

年収は医者時代の給料を勘案し、それと最低でも同額~少し上を提案してくる

きっと普通のサラリーマンの方にとっては常識なのだろうが、転職エージェントの報酬は、転職した人の年収の何%という具合に決まる。転職エージェントの報酬は、自分の年収が上がれば上がるほど、一緒に上がっていく。なので待遇面の交渉では、基本的には自分の味方である。ただあまりに相場と不釣り合いなお願いをすると、採用してもらえなくなるので、そこはよく話し合うべきだろう
 
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転職エージェントとの面談を通して「製薬企業に興味ある、製薬企業の人と直接会ってみたい」。そう感じればさらに先のステップへ進む。(逆にここで「興味ないな」と思えば終了である)。製薬企業の人との面談を希望します、と伝えると、履歴書を送ることになる。転職エージェントは、面談内容とその履歴書に基づいて、いくつかの製薬企業とのアポを取ってくれる。
企業が興味を持ってくれれば、そこからカジュアル面談(採用面接とは別の、お互いを知るための面談)や採用面接が組まれていく。
次回は具体的な企業の選び方に関して、概説させいただく予定である。