今の職場で評価されていても、高みを目指すならそこを去れ

転職を決意してから、実際に会社に行ったりとか、面接を受けたりしていることは、当然黙ってやっていた。自分自身も、本当に転職したいのかとても曖昧だったので、そのようにしていた。もともと前職が嫌になって転職を考えてたわけではないのだ。

それでも、オファーを頂いた後、ぜひやってみたいとテンションが爆上がりした。

転職を決意してから一番気になったのが、「自分がいなくなっても大丈夫か?」ということであった。自意識過剰だったかもしれない(実際そのとおりだった)が、多くの医療現場では長時間労働が常態化しており、一人が担っている業務量は大きい。自分はその中でも中間管理職のようなポジションで、他部署とも多くの調整を行っていた。自分しか詳細を知らない業務もいくつかあったし、佳境に差し掛かっているプロジェクトもあった。

心配になった僕は、転職先から予め提示されていた入社時期を、遅らせられないか相談をしてみた。

「それは駄目です。優秀な人は、いつになっても、仕事で必要とされなくなることはないです。なので、引き継ぎスケジュールで入社時期を調整するのは、賢明ではありません。こちらの都合上、この日時がベストです」

なるほど、そういうものか。評価されているのか騙されているだけなのかよく分からなかったが、とりあえず、転職の日程は動かさないようにした。その頃には、いろいろな方々の耳に入り、周りから色々聞かれるようになった。

ヘッドハンティングじゃん、やったね!とか、若いうちは好きなことやればよいよ、とか。応援してくれる方々が多くてとても嬉しかったことを覚えている。なにすんの?どうなんの?みたいなコメントもあった。褒めてるわけでも悲しんでるわけでもなく、単純に「?」と戸惑った方々である。これは、自分自身ですら転職後に何をするのかよくわかっていなかったので、当然の質問であったと思う(これに答えたいと思ったのがこのブログを始めた理由でもある)。

 

ネガティブなコメントも数多く聞こえてきた。

・無責任

・非常識

・ハードワークからの逃避

・金に走るのか

などなどである。中には結構尊敬している人からのコメントも会ったりして、かなり凹んだ。それでも、いろいろ文句行ってもらえるのはそれだけ評価していただいていたからだと、勝手にポジティブに捉えることにして乗り切った。

全体的に感じたのは、どれだけ現状に我慢しながら働いている人が多いのか、ということである。

育ててもらった職場に感謝することと、転職するかどうかの判断は、自分としては別問題だと思う。新しく好きな人ができた時、長年連れ添った彼女と別れる、みたいな話だ。お互い辛いが、その精神状態(転職や別れを決意した状態)でそのまま同じ職場で働き続けられるほうが、むしろ不健全ではないだろうか。

こんな話を転職先にしたら、こう返ってきた。

「優秀な人が去るときは、ポジティブであったりネガティブであったり、いろいろなことを言われるでしょう。優秀な人が転職する時は、それが普通です。むしろ何も言われない人を、弊社は求めておりません。」

こんな後押しもいただき、無事退職が決まった。とは言っても、これまで一緒に頑張ってきた仲間たち、頼りにしてれた後輩たち、尊敬できる先輩、お世話になったボスと別れるのはとてもさみしかった。これまで積み上げてきた評価が一旦リセットされてしまうことも、とてももったいない気がした。このままここにいれば、絶対楽しく快適に過ごせるのにな…。

それでも僕は、申し送りを済ませ、病院を去る決意をした。このままここにいても、それは惰性だ。いつでも戻ってこれるんだし、とりあえずやりたいことに飛び込んでみよう。

そうして、僕の臨床医のキャリアは一旦停止した。

 

以下補足

退職しますという意思表明と、実際の退職日との間隔は、極力短くしたほうが良いのではないか。意思表明すると周りから「この人はやめちゃう人」というレッテルを貼られる。責任のある仕事は回されなくなるし、会議などで発言しても「そうは言っても、あんたやめちゃうじゃん」的な反応をされてしまう。

自分の場合は特に意識せずに、退職の意思表明と退職日をたまたまセットで伝えた。これは英断であったと思う。さもなければズルズルと退職日を延期されてしまっていたのは明らかだし、実際半年ぐらい引っ張られたという話も聞く(退職金を人質に)。

自分の場合は、2ヶ月弱あった。当時は短いかなと思ったのだが、外資系企業のように入れ替わりの激しい職場であれば正式なアナウンスからわずか2週間ぐらいで居なくなってしまうのが普通らしい。もちろん水面下ではもっと前から話は進んでいるのかもしれないが。